四万《シマ》温泉


2005-08/13~2005-08/16


毎年夏の恒例行事になった息子夫婦からの招待旅行、今年は四万温泉の旅をプレゼントされた。
今回も息子夫婦の運転する車の後部座席に座っているだけの大名旅行であった。


2005-08/13(土)

旅行は明日14日からの予定であったが、『13日には日帰りで埼玉の実家へ墓参りに行く』と言ったら
『それなら埼玉で落ち合い、そのまま旅行に行った方が時間的にも身体的にも楽だろう』と、急遽ネットで宿を探してくれて、一日早く旅に出ることになった。
しかし、盆休み中の土曜日それも当日の朝になってからの宿探しでもあり何処の宿もすでに満室。
あちこち探して、やっと「夕食無しなら」との条件で玉原高原に一泊の宿を見つけることが出来たが、『夕食時は忙しいのでチェックインは夜8時以降にしてくれ』と言われている。
時期的に高速道の大渋滞も予想されたので、少し早めに出発して丁度良いだろうと埼玉の実家を出たのは午後3時過ぎ、関越自動車道で直接玉原高原の宿に向かった。
ところが一般道も高速道も渋滞の気配は全くなく拍子抜けするくらい。
このままでは早く着きすぎそうなので宿の近くまで行ってからゆっくりと夕食を食べて時間調整しようと言う事になった。
沼田を通り過ぎて山道に入ると次第に周囲の家並みが途絶え始め、その内に暗闇の中に見えた民家の明かりも全く見えなくなってしまった。
暫く山道を進むとポツンと一軒の建物が。レストランのような幟も立ててある。
『食事が出来ますか』
『ここは旅館で食事だけはやっていません。このあと玉原高原まで食事が出来る所は一軒もありませんよ』。
やれやれ折角来た道をまた沼田まで引き返す羽目になってしまった。
それにしても沼田には豚カツ屋が多いのは何故だろう。
うどん屋にもラーメン屋にも豚カツの幟が、勿論豚カツ専門の店も沢山ある。
夕食時にウェイトレスに理由を聞いてみた。
『ウ~ン、言われてみれば多いかもしれないですね、気がつきませんでした。でも特に理由は思い当たらないですけど』。

玉原高原の宿(ペンション・コーフィーカップ)に着いたのは午後8時過ぎ、3匹のコーギーが出迎えてくれると言うのがこの宿のウリであったが、到着時刻が遅かったこともあり既に犬小屋に入れてしまったあと。
明日の朝を楽しみにしよう。
冬にはスキーヤーが泊まる宿なので温泉旅館のような豪華さはないが、風呂が有ってゆっくり寝られて朝食が出ればそれだけで充分である。
温泉旅館のような広くて豪華な風呂ではないが貸切なので何を気にすることも無くのんびり出来るところが良かった。

ペンション・コーフィーカップ




2005-08/14(日)

宿から車で1分も走らないうちにスキー場のゲレンデを花畑にした玉原ラベンダーパークに到着。
まだ朝の9時というのに既に駐車場には沢山の車が。
エントランスガーデンにも花畑が広がっているが、スキーリフトに乗ってハイランドガーデンまで上り花畑をゆっくりと散策しながらエントランスガーデンまで戻ってくるコースがお薦めである。
花畑の周囲にはヨツバヒヨドリやヤナギラン、それにヤマハハコやキオンなどの花が咲き乱れていて花好きには飽きない場所である。(←ちょっと持ち上げすぎかな)

玉原ラベンダーパーク
ヤナギラン
ヨツバヒヨドリとヤマハハコ
ラベンダー
キオン

次は近くにある玉原湿原へ。 初夏の花は終わり秋の花はこれからと言う季節で咲いている花の種類は少なかったが、ミズギクの花は今回初めて名前を知った。 湿原は時期の割には閑散としており、のんびりと散策を楽しむことが出来た。

湿原風景
ミズギク
コオニユリ
キンミズヒキ

玉原から県道266号を数キロほど南下すると、天狗の信仰で知られる迦葉山龍華院弥勒寺《カショウザンリュウゲイインミロクジ》の案内板が見えてくる。
この寺は迦葉山の中腹にあり県道から3キロほど山中に入った所にあり、嘉祥元(848)年創建で康正2(1456)年に曹洞宗に改宗、その後徳川初代将軍の祈願所となった。拝殿内には奉納された様々な大きさの天狗の面が所狭しと安置されていた。
弥勒寺境内にある「馬かくれ杉(沼田市指定天然記念物)」は、現地の説明書きによれば樹高35mもある巨木で、弥勒寺創建当時に植栽されたものであろうと書かれていたが、推定樹齢1000年と弥勒寺の創建年次と合わないのはご愛嬌か。 幹の根元部分は空洞になっている。

迦葉山龍華院弥勒寺案内図

本殿
釈迦堂
釈迦像

拝殿
拝殿内部

開山堂
鐘楼
馬かくれ杉

県道266号をさらに南下して国道120号を東進すると日本百名爆のひとつ「東洋のナイアガラ」とも称される「吹割の滝(国指定天然記念物)」に着く。
この滝は片品川の水流によって河床の岩質の軟らかい部分が削られて出来た割れ目に、清流が一気に落ち込む所から吹割の滝と呼ばれている。
滝の落差は7mと小さいが幅が30m近くあり間近で見ると水煙を上げて落ち込む水瀑は迫力満点である。
昨年12月に見た時は冬季の凍結に期待してダムの放流を停止してしまったためにチョロチョロと岩を伝う程度の流れしか無かったが、今回は直前に雨が降ったこともあり本来の豪快な瀑布が復活していた。
この付近を吹割渓谷と称し渓谷沿いに遊歩道が作られていて、この遊歩道を50mほど下った所に鱒飛びの滝がある。

吹き割りの滝(上流から望む)
吹き割りの滝

吹割渓谷遊歩道
鱒飛びの滝

今晩からの二泊は四万温泉の老舗旅館「四万たむら」。
温泉街の一番奥に位置し面積33万㎡とも言われる広大な敷地の中に建つ旅館には、男女合計14もの風呂があるが、男性用の大浴場は2階分吹き抜けになっていて、上の階にある女性用の大浴場や館内の通路から丸見えと言うのはいただけない。
その点、屋内の露天風呂は目の前の渓流からのそよ風が湯にあたって火照った身体に心地よい。
屋外にある露天風呂(混浴)は目隠しもない浴槽の直ぐ横で客が渓流釣りをしていてとても落ち着いて風呂になど入ってはいられない・・・と思ったが、よく見たら何と一名の入浴客が!!
姉妹館の「四万グランドホテル」の浴場も利用することが出来るので行ってみたら、そちらの方が広くて落ち着いて入っていられるのでお薦めかな。
「四万たむら」から「四万グランドホテル」へは浴衣を着たままでもOKで、徒歩数分の距離ではあるが、フロントで頼めばベンツで送り迎えもしてくれるので雨降りのときや炎天下での移動には助かる。
旅館のフロントや玄関の奥座敷があるところは天保5年に建造された部分で、天井が低く背が高い人は屈まないと梁に頭をぶつけてしまう程だが、昭和30年に建てられた客室は天井も高くその心配は無い。
食事はレストランの横6畳間ほどの個室で、厨房から作りたての暖かい食事が運ばれる。
寝泊りする部屋での食事ではないが広い旅館内を部屋まで運ぶ間に冷えてしまうことも考えたら合理的な方法かもしれない。

四万たむら(8月16日撮影)



2005-08/15(月)

今日の最初の予定は四万温泉の北端にある日向見薬師堂(国指定重要文化財)。
この社は慶長3年(1598年)に真田幸信の武運長久を祈願して建てられた群馬県内最古の寺院建築である。
また薬師堂の前にあるお籠堂《オコモドウ》(町指定重要文化財)も慶長19年(1614年)に建てられた古い建物で、湯治客が病気を治すために定められた期間籠もって荒行をしたと言われている。
薬師堂をあとに麻耶の滝を目指して山道を登ると、『ヒルに注意。ズボンや靴に塩水をスプレーしてから登ってください』との立て札と10%塩水のスプレーが置かれている。
準備万端、さあいよいよ滝だと思ったら、直ぐその脇に『土砂崩れのため通行止め』の看板が!!!
仕方なく引き返して次の目的地へ向かう。 

日向見薬師堂(重要文化財)
お籠堂(中条町指定重要文化財)
薬師堂(国指定重要文化財)

四万温泉の直ぐ北にある四万川ダムは 堤高89.5m堤長330m総貯水量9,200,000m3の洪水調節用ダムで、下流に設置された日向見発電所は最大出力1,000kWの発電能力がある。
湖面にアーチ状に浮いているオレンジ色のものは、網場《アバ》といって流木やゴミがダムに流れ込まないように堰き止めるためのものである。

四万川ダム
奥四万湖

四万川ダムから下流を望む(もしダムが決壊したら?)

四万温泉から国道353号を少し南下して、四万川の秋鹿橋から少し下ったところに群馬県指定の天然記念物である四万甌穴《オウケツ》がある。甌穴とは川原の石が水流に流されずに同じ場所で揺れ動いたときに川底の岩盤の柔らかい部分がえぐられて出来た穴のことである。
川原に下りて間近から見ることが出来るが、自然現象の面白さを別にすれば迫力もなくそれほど見栄えのするものではなかった。

甌穴群

四万温泉をあとに国道145号を吾妻川沿いに西進し吾妻渓谷へ。
吾妻川に架かる新大橋から鹿飛橋までの1.8キロの遊歩道が吾妻渓谷探勝のお薦めハイキングコースである。
JR川原湯温泉駅の近くに車を置いて川原湯温泉へ至る道を少し進むと直ぐの所に新大橋がある。橋の上から眼下に「白糸の滝」が見えるが近づけないので迫力が感じられないのは残念。
遊歩道は、距離は短いが結構起伏があるので休憩を含めて往復1時間半は掛かると思ったほうが良い。
遊歩道は渓谷に沿って作られているが、遊歩道と渓谷の間に木立もあって渓谷を眺められる所は少ない。
辺りの木々や小鳥の鳴き声,奇岩などを眺めながら歩いて行くと渓谷を一望できる展望台に到着。
そこから鹿飛橋までは一気に下って橋を渡り国道145号線に出て車のところまで戻る。

白糸の滝
吾妻渓谷(鹿飛橋)
吾妻渓谷(八丁暗がり)

現在、吾妻峡がすっぽりと埋まる八ツ場《ヤンバ》ダムの建設が進められており、ダムが完成すると川原湯温泉もJR吾妻線川原湯温泉駅もすべて湖底に沈むことになる。
東京・埼玉・千葉・群馬・茨城の一都四県400万人分の水道用水確保とはいえ、素晴らしい景勝地がダムに埋もれてしまうのはなんとも勿体無い。

八ツ場ダム説明図

国道145号沿いにある郷土料理の店『ふるさと』で昼食。店は古民家を再生して建てたらしいが、太く曲がりくねった梁は黒光りしていて手入れのよさが伺える。
そこで岩魚料理や十割ソバなどに舌鼓を打ったが、八ツ場ダムが出来ると湖底に沈んでしまうので引越しを余儀なくされるらしい。

郷土料理『ふるさと』

川原湯温泉から国道145号線をさらに西へ進んで不動滝の入り口で駐車。山道に入り不動尊を祀った社を過ぎれば間もなく不動滝が見える。木の葉のザワメキと遠くから微かに聞こえる滝の音の中で訪れる人もなくひっそり建つ社を見ていると何故か侘しい気持ちになってきた。

不動尊を祀った社
不動滝

六合《クニ》村には世立八滝と呼ばれる沢山の滝があるが、遊歩道が整備されていないので見られるのは一番下流にある大仙の滝だけである。
国道405号の道の駅「六合」から少し北上した所にあるドライブイン滝見に車を止めて国道を50mほど戻ったところから山に入ると数分で到着。 滝までの道は崖沿いに作られた足場も悪い狭い道で、雨のときは滑りやすく崩れる恐れもあり滑落しないよう細心の注意が必要である。 滝の落差は20m弱と中規模であるが水量が多く滝つぼまで近づけるので迫力は十分である。
道脇にはキツリフネも咲いて歓迎してくれた。
ところで何故六合を「クニ」と呼ぶようになったかご存知だろうか。
道の駅「六合」でいただいたパンフレットによれば、『明治33年に草津村が草津町と六合村に分村したとき六合村には六つの大字(小雨,生須,太子,日影,赤岩,入山)があったことから東西南北天地と掛け合わせて名づけたと言われています』と書かれていた。

大仙の滝
キツリフネ

宿に帰る途中、道脇に[コスモス100万本 あと○○m]との看板が目に付くようになった。
『100万本のコスモスなら是非みたいじゃないか』ということで急遽予定変更。それが大岩フラワーガーデンである。
ガーデンの奥さんに聞くと、横浜に住んでいた時に偶々旅行で立ち寄った大岩やその周辺に広がる景色に魅せられ、荒れ果てていた牧場跡を譲ってもらい整備して「大岩フラワーガーデン」を開いたと仰っていた。
花だけでなく沢山の猫や兎,山羊それに人なつこいガチョウなどもいて小牧場の趣も。
8月のことでイエローコスモスしか咲いていなかったが、10月には色とりどりのコスモスを咲かせ、その花畑の中で埼玉に住むお嬢さんの結婚式をするので是非またどうぞと誘いを受けた。
まだまだ整備途中ではあるが日焼けした笑顔と輝く目が印象的であった。

300万本のイエローコスモス(奥に見える小高い岩山が大岩)
2005-08/16(火)

空一面に青空が広がって朝から肌を刺すような陽光が降り注ぐ。
出発までの空き時間に四万温泉に泊まって初めての温泉街散策にでてみた。夜の喧騒と違って朝はひっそりと静まり返り時折車が通る以外は通行人の姿もない。
道の両側に『ファイト』の幟が並んで立てられているのを見て、沈みがちの温泉街に活気をもたらそうとの活動かと思っていたが、後で聞くとNHK朝の連続ドラマ『ファイト』の舞台になったからだそうだ。
連ドラは一度も見たことがないが、舞台になるかどうかで観光客の数も変わってくるらしい。

帰路、一般道を走って大胡の「道の駅」へ寄り野菜を買っていたら、屋根に設置されたスピーカーから『宮城方面で地震が発生したため、東北道の矢板より北は閉鎖されています』との放送が流れてきた。
それなら東北道は空いている筈だと、渋滞が予想される関越道を避けて東北道で帰ることに変更。

道の駅「グリーンフラワー牧場・大胡」

途中一時雨には降られたものの、心配した渋滞もなく順調に帰宅できた。

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