五稜郭の桜と積丹半島の旅


2002-04/25~2002-04/27

北海道の桜は例年5月連休に満開を迎える事が多く、我が家ではなかなかその時期に合わせて旅行する事は難しかった。
しかし、今年は開花が異常に早くて連休前には満開になるとの情報。 その時期なら観光客も少ないかも知れないと急いで旅行会社に電話する。
幸いにも連休中のツアーは満席で締め切られていたが連休前のツアーには空き席があるというので直ぐに予約した。
週間天気予報によれば北海道は今週の後半雨だと言うが、それくらいの事でこのチャンスを逃すわけには行かない。
『え~い、何とかなるさ。今までずっと晴れ男の異名をほしいままにしてきたんだから』
と確たる根拠もない決断で道南の旅が始まった。


2002-04/25(木)

早朝の便はつらい。朝5時過ぎの高速バスで羽田に向かう。渋滞はないが眼も醒めない。眠い目をこすりながらANAのカウンターで搭乗券を受け取り、待ち時間を利用して軽い朝食をとる。
空を見上げれば所々に雲がある程度。
『おー、いい天気じゃないか』って東京が晴れててもしょうがないのに何か良い気分。
7時前に羽田を発ったANA864便は予定通り8時半前に新千歳空港に到着。雲は多いが晴れ間も見える。『こりゃ良いぞっ』と淡い期待を抱いていたが、札幌に近づくにつれて段々と雲が多くなりその内に激しい雨が降り出した。
『晴れ男の強運ももはやこれまでか』
不思議な事に、札幌大通り公園に着くとあれほど降っていた雨もぴたりと止んで空には晴れ間も見える。
あちこちに水溜りはあるが水滴さえ降って来なければ何も文句はない。
札幌では昨日風速25m/sの強風が吹き荒れたらしい。
『昨日の風で咲いていた桜もみんな散ってしまったかも知れませんよ』と言われたが果たしてどうかな?

用心の為に傘を持って、まず赤レンガ造りの旧道庁舎(国の重要文化財)へ向かう。案の定、桜は申し訳程度の花びらを付けているだけだが蕾が多い所を見るとまだ満開にはなっていないようだ。
旧道庁舎は見学自由なので早速中へ入る。北海道開拓の歴史が展示された部屋や北海道に生息する動物の剥製などが置かれた部屋、それに知事の執務室など自由に見学できる。
庭園の池の水面の桜の花びらが昨日の強風を物語っている。白い花は満開のコブシ。


そこからの帰り道に、かの有名な時計台に寄る。以前雪祭りに来た時は殆どの時間を大通り公園で過ごしてしまったため札幌の街はあまり歩いていないので、時計台も今回初めて入る。中にはこれと言った見るべきものもないがこれも思い出の一つである。
桜の名所と言われる丸山公園の桜は殆どが山桜。隣接する北海道神宮の参道の山桜も強風で飛ばされたのか葉のほうが目立つ。公園内の桜は既に満開を過ぎたのか風がそよぐたびに花吹雪が舞う。山桜の満開には2日ほど遅かったようだが、山桜以外は今が盛りらしく街なかの民家の桜はどこも満開に咲き誇っていた。



札幌を後にする頃には晴れ間も広がり、小樽に着いた時は雲も消えて青空がまぶしい。

小樽の街は前にきた時に周ったので今回は旧青山別邸へ急ぐ。ここはニシン漁で財を成した小樽の三大網元の一つ青山家の青山政吉が17歳の娘と共に建てた別邸。1500坪の敷地に部屋が18室もある木造2階建て。春慶塗の廊下や銘木を用いた天井、梁、階段など建物そのものが美術品。しかし、その後売却され現在の持ち主になってからレストランやみやげ物売り場などが増築され観光客に開放された。ここで庭を見ながらの昼食もまた良いものである。残念ながら室内の撮影にはOKが出なかった。


旧青山別邸の後は祝津にあるニシン御殿へタクシーを飛ばす。積丹半島の網元田中福松が建てたもので、昭和33年に現在地に移築され、現存するニシン御殿では最大規模と言う事である。ここは建物もさることながらそこからの眺望がまた素晴らしく、眼下にある水族館のイルカショーも手にとるように見ることが出来る。


小樽に戻りオルゴール館や街並み散策で時間をつぶす。オルゴール館の前にある蒸気時計の脇で、買い物中の妻を待っていると突然の雨が・・・と思ったら蒸気時計が時報を刻んだ為に噴出した蒸気を被ってしまったようだ。

小樽の次は宿泊予定のキロロリゾートへ向かう。山あいの道を登っていき周囲に残雪が目に付くようになってくると目的地である。キロロとはアイヌ語で『まごころ』を意味する言葉らしい。宿泊はキロロリゾート内にある『ホテルピアノ』。近くにはスキー場もあるが、融雪で危険の為本日で今シーズンは終了と言っていた。
部屋から眺める雪山がまた素晴らしい。温泉に入って雪山を眺めながらのんびりと休息。部屋も広いしすべてが素晴らしい。



2002-04/26(金)

今日は積丹半島を周って大沼公園の宿までの予定。朝9時に出発し海岸沿いに積丹半島を北上する事1時間強。神威(カムイ)岬へ到着。
駐車場から急な坂道を300mほど登るとちょっとした広場があり展望が開ける。そこからは少し平坦な道に出て両側を断崖絶壁にはさまれた隘路を岬灯台まで歩く。
歩き出すと、灯台までは意外に距離があるうえに起伏が激しくなったが、透き通るようなエメラルドグリーンの海面を見下ろしながらの行程なのでそれほど疲れは感じない。


神威岬をあとにそこより少し南西に位置する西(サイ)の河原へ。ここは6年前に国道229号が全面開通するまで行く事が出来なかった秘境らしい。ここで昼食休憩をして、午後は積丹半島西海岸の延々と続く奇岩の海岸と遠方の雪に覆われたニセコの山々を眺めながらのドライブだ。蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山も山頂から麓まで一辺の雲もなくはっきりと見える。
寿都(スツ)を過ぎるとまもなく弁慶岬へ到着。断崖絶壁や奇岩を見てきた後では特にどうって事はない。景勝地には不釣合いな弁慶の像が立てられていたがのが笑いを誘う。



そこから更に延々と海岸沿いの道を走り、北桧山で日本海とお別れして玉川水仙公園へ。丹羽市街を見下ろす小高い丘の15ヘクタールの敷地に約30種類、30万株の水仙が植えられ桜並木とあわせて楽しむ事が出来る。遠方に望む冠雪した遊楽部(ユーラップ)岳の姿も美しい。

そこを後にすると渡島半島を横断して太平洋が見えるまでは山の中。
国縫で再び見えた海は太平洋。今度は海を左に眺めながら国道5号を一路南下。道の右側には水芭蕉が群生している小川沿いの湿地が何箇所か見うけられる。
まもなくイカ飯で有名な森町に到着しここで夕食を取る。ここでは、満月に照らされ夜空に浮かび上がる駒ケ岳のシルエットと海面に映りこむ月影、そして麓の民家の明かりがおりなす絶景に暫く眺めいってしまった。

函館大沼プリンスホテルに到着した頃は既に夜の八時を回っていた。部屋に荷物を置いて早速大浴場へ。露天風呂の前には広大な池があり、その向こうに広がる白樺林がライトアップされ夢幻の世界にいざなってくれる。『う~ん、こりゃ絶景だ』カメラを持って写真を撮りたい心境になるが誤解されるのはイヤなので思いとどまる。

2002-04/27(土)

旅の朝は早い。朝5時半に目が醒め温泉に入ると既に数人の先客が。昨晩見た幻想的な白樺林も明るい中で見ると全く違った印象である。
出発までの時間、ホテルで貸し自転車を借りて。白樺の林や新緑と桜とコブシの花に包まれた木立の中を30分ほどサイクリングする。風は冷たいが池の白鳥を眺めながらの久しぶりのサイクリングで気分はすがすがしい。

今日の予定は大沼国定公園と函館市内観光だ。最初はホテルの近くにある大沼国定公園。10分コースの観光モータボートに乗って大沼と小沼を疾走する。島々を縫うように走るボートはなかなか快適だったが途中では停止してくれないので写真を撮れなかったのが少し心残りであった。

大沼観光の次はトラピスチヌ女子修道院。ここの桜は今まさに満開で、青空と教会とそよ風にも舞う花びらと、しばし至福の時をすごす。


トラピスチヌ女子修道院の次は五稜郭。もともとこの旅は以前から見たかった五稜郭の桜を見たくて計画した旅である。
五稜郭タワーでの昼食をとったあと、タワーにあがって上から星型の五稜郭公園を眺めたあと公園の中を散歩する。残念ながら満開の時期を少し過ぎて既に2割方散ってしまっているが、満開後初めての土曜日とあって沢山の花見客が桜の下で宴を開いていた。



五稜郭の次は函館の桜の名所「函館公園」へ。ここの桜ももう時期が過ぎていたが今晩が桜祭りらしく提灯が飾られ市内から沢山の花見客が訪れていた。

残り時間は元町の散策と函館山展望台ですごす。古くから貿易港として栄えた函館には洋館や教会が多い。元町にあるカトリック教会やハリストス正教会などが東本願寺の別院の脇に建っているのも面白い。今日は天気が良いので、函館山の展望台にあがると遠くに下北半島や津軽半島、さらには岩木山までが見えた。



帰りは函館空港18:55発のANA864便。20:15に羽田へ着いたがその後の連絡が悪く、自宅へ帰り着いたのは午後10時になってしまった。少し疲れたが充実した3日間であった。

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